事業者でないと普段はなかなか気にならない税金。
身近な税金で言えば消費税ですが、2018年時点では税率8%です。国民全員が物品など商品を買うときに消費税を支払う義務がありますが、フリーランスや個人で事業をしているクリエイターの方は別途消費税を支払う場合があります。
思わぬところで税金を支払ったり、実は支払わなくてもよかった税金があったりと、税金の種類や仕組みを知っておくことはビジネスマンの生きる知恵だと私は考えています。
税金は専門的な知識が多いので、現役の個人事業主の方から「役に立つ節税方法」についてヒアリングをした気をつけるべきポイントについてまとめました。
個人事業主やフリーランス、副業で収益を得ている会社員のみなさんが注意すべき、確定申告時の税金の取り扱い方について説明します。
個人事業主やフリーランスが確定申告で気をつけること
結論から個人事業主やフリーランスの方が確定申告時に支払わなければいけない税金は、下記8つになります。
- 消費税
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 償却資産税
- 健康保険
- 国民年金
- 印紙税
節税をするためには、いろいろな控除を利用するために65万円控除枠の青色申告特別控除が受けたり、家族への給与を経費にしたり、赤字を3年間繰越したりなどの方法があります。
税金対策をするためには、各種支払う税金の仕組みをそれぞれ理解する必要がありますので、本稿では、消費税・個人事業税の2つについて深掘りします。
個人事業における消費税について
消費税の納税義務個人事業の場合、その年について消費税の納税義務があるかどうかは基本的には2年前の年の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判定します。
2年前の年の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、その年は消費税の納税義務者となります。
税制改正により、事業を始めてすぐの場合、2年目の消費税の納税義務の有無については特定期間(この場合、事業を開始した年の1月1日~6月30日までの期間)の売上高(給与支払額)が1000万円を超えているかどうかで判定する必要がでてきました。
その他、自主的に消費税の納税義務者となる届出をしている場合など、消費税の納税義務者となるケースは様々です。
簡易課税制度を選択すると有利なる?!
消費税を計算するときは、『原則課税制度』と『簡易課税制度』の2種類に分かれます。
原則課税制度の場合は、消費税の確定申告によって納める必要がある消費税額は、預かった消費税額(物を売ったときに受け取った消費税額)から支払った消費税額(物を買ったときに支払った消費税額)を控除して計算することになります。
この方法では税額計算が手間なので、比較的規模の小さい事業者に関しては課税売上高と一定の『みなし仕入率』を使って簡便的に納める消費税額を計算する『簡易課税制度』を選択することができるとされています。
簡易課税制度の場合は、売上高さえ把握出来れば納める消費税額が計算できるので計算が簡単です。
また、簡易課税制度では実際に支払った消費税額は納税額には関係がなく、業種区分ごとに定めされている下記のみなし仕入率を使って計算することになります。
- 卸売業:90%
- 小売業:80%
- 製造業等:70%
- その他の事業:60%
- サービス業等:50%
そのため、文筆業・執筆業、漫画家、同人作家で、あまり課税仕入となる経費が少ない方にとっては、原則課税制度よりも簡易課税制度を選択した方が納税額が少なくて済むことがあります。
簡易課税制度で不利になる場合は?
ただし、簡易課税制度では高額な設備投資(オフィス移転や車購入など)をした際は、実際の課税仕入が極端に多額になった場合でも、消費税の納税額には何ら計算に変化はありません。
原則課税制度であれば支払った消費税額が多額になり、納税額が少額になったり還付さするケースでも、簡易課税制度では売上高に応じた消費税額を納めなければならないというデメリットもあります。
簡易課税制度は一度選択すると、約2年間は簡易課税制度を継続して消費税額を計算しなければならなくなります。
高額な設備投資を予定している場合には、予め簡易課税制度の適用を止める手続きを行っておくようにしましょう。
簡易課税制度によって消費税額を計算するには次の要件を満たす必要があります。
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者であること。
- 原則として、簡易課税を適用しようとする課税期間開始の日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄税務署長に提出すること。
届出をしていても、基準期間(個人事業の場合は2年前)の課税売上高が5,000万円を超えている時は原則課税制度にする必要があります。
一度簡易課税制選択届出書を提出すると、基準期間が5,000万円以下の課税期間については簡易課税制度によって計算する必要があります。
簡易課税を選択した後、原則課税制度に戻したいときは必ず「消費税簡易課税制度不適用届出書」を税務署に提出しましょう。
個人事業税について
個人事業を始め、事業が軌道に乗って利益が順調に伸びてくると問題になってくるのが個人事業税です。
個人事業税には事業主控除という基礎控除枠が290万円あります。個人事業税では青色申告特別控除は認められていませんので、青色申告特別控除前の所得が290万円を超えると個人事業税が発生することになります。
個人事業税が掛からない業種もある?
ただし、業種によっては払わなくてもよい場合があります。
地方税法第72条の2に定める事業に該当しないものから生じる所得については、個人事業税は課せられません。
地方税法第72条の2には、事業税が課せられる業種が色々と記載されていますが、文筆業や漫画家業を本業として活動されているクリエイターの皆さんは、対象に含まれていないことから個人事業税がかかりません。
個人事業税は都道府県が税額を計算してその金額を納税者に通知する『賦課課税方式』が取られています。
その際に事業内容から個人事業税の非課税とされている事業を行っていると判断されれば、個人事業税の納税通知書は送られてきません。
自分の収入は個人事業税の非課税とされる事業から生じた収入であることをアピールするために、確定申告時に事業内容に文筆業・執筆業や漫画家業などと書いておくと良いでしょう。
例えば、事業内容に漫画家と記入していても都道府県税事務所から個人事業税の納税通知書が届いたときは、担当課に連絡して個人事業税の課税を見直してもらいましょう。
ただし、漫画家といってもその内容によっては個人事業税の課税対象となる事業を行っていることもあります。
同人誌の販売収入はどうなるの?!
例えば、コミケなどで行われる同人誌の販売収入ですが、同人誌の場合、いわゆる自費出版に該当しますので出版業として取り扱われます。
出版業も地方税法第72条の2に定められているため、同人誌の販売収入が相当ある場合には漫画家であっても個人事業税がかかってくることもあり得るのです。
確定申告の際、職業欄にとりあえず『執筆業』と書いておけば事業税がかからない!と言われたりもしますが、税務署から業務内容の問い合わせがあり、事業所得の課税対象となる事業を行っていると判断されれば、個人事業税が課されることになります。
個人事業税の課税対象となる事業と非課税となる事業を両方行っている場合には、確定申告書B第二表の事業税に関する項目『非課税所得など』という欄に非課税となる事業にかかる部分の所得金額を記入しておきます。
事業所得の内、ここに記載されている金額については、非課税とされている事業から生じた所得なので個人事業税の計算から外してください!という意味です。
また、確定申告書にはAとBの二種類ありますが、事業所得がある場合には申告書Bを使います。
個人事業税は基本的には事業所得や不動産所得に対して課されるので、これらがない人が使う申告書Aには事業税に関する項目はそもそもありません。
ただし、雑所得として申告をしていても事業による収入と判断されれば、個人事業税がかかるという事もありえます。
まとめ
- 個人事業主やフリーランスの方が確定申告時に支払わなければいけない税金は、消費税、所得税、住民税、個人事業税、健康保険、国民年金、印紙税の7つ
- 消費税は、基準期間における課税売上高が1,000万円を超えたときに「消費税の税義務者となった旨の届出」を出す必要がある
- 消費税を計算するときは、『原則課税制度』と『簡易課税制度』の2種類に分かれます
- 比較的規模の小さい事業者に関しては課税売上高と一定の『みなし仕入率』を使って簡便的に納める消費税額を計算する『簡易課税制度』を選択することができる
- 文筆業・執筆業、漫画家、同人作家で、あまり課税仕入となる経費が少ない方にとっては、原則課税制度よりも簡易課税制度を選択した方が納税額が少なくて済むことがあり
- 簡易課税制度では売上高に応じた消費税額を納めなければならないというデメリットもある
- 簡易課税制度を選択した後、原則課税制度に戻したいときは必ず「消費税簡易課税制度不適用届出書」を税務署に提出する
- 個人事業税には事業主控除という基礎控除枠が290万円ある
- 個人事業税では青色申告特別控除は認められていませんので、青色申告特別控除前の所得が290万円を超えると個人事業税が発生する
- 事業内容から個人事業税の非課税とされている事業を行っていると判断されれば、個人事業税の納税通知書は送られてこない
本稿では、消費税と個人事業税について注意すべきポイントについて説明しました。同じ個人事業でも業種によって税率が変わってくるのは意外な発見ですね。
会社員の副業である程度の利益が出てる方は、開業届を出すか判断に迷うと思いますが、各種税金を支払うタイミングや仕組みについて理解されてから慎重にはじめてみましょう。